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【ドイツ旅行⑧】ドレスデン【ゼクシッシェ・シュバイツ】

 

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 渡し船は向こう岸へ着いた。

登山道に入る。登山道には登りやすいように階段が作られている。まわりには背の高い木がまっすぐに伸びている。登るとすぐに心臓が高鳴り、息が上がる。森の空気は濃密で土のにおいや木のにおいが鼻を刺激する。

僕たちは少し休憩することする。登山道から外れ、倒れた大木の上に腰を下ろす。コップにワインを注ぐ。ワインと森の香りが混ざる。ぜいたくな香りだ。

休憩後また山を登る。森を抜けると岩の壁の間に入る。風景が一変する。背の高い岩壁だ。音が遮断されて少し静かになる。岩の隙間にきれいな緑色の苔が生えている。前方から子供の声が聞こえて、親子連れが降りてくる。通り過ぎる時にあいさつをする。山では人はフレンドリーになる。

分かれ道が現れる。左手に行くとテラスのようになっていてエルベ川を見下ろすことができる。眼下に広がる森と川を見渡す。知らず知らずのうちに結構な高さまで登っていた。見下ろす景色は壮大だ。淡い色合いの家々が森や川の色と調和している。

登山道に戻り、更に登る。登り続けると岩でできたアーチ橋があった。結構な長さだ。中世を舞台とする映画に出てきそうな橋だった。まわりにはにょきにょきと大きな岩が生えていて、アーチ橋を囲んでいる。こんな山の上にどうやってこんな巨大な橋を建設したのだろう。昔はここに城でも建っていたのだろうか。昔のドイツの貴族はへんぴな所に城建てる傾向があるようだし。

橋の上には観光客がたくさんいる。みんな写真を撮ったり、景色を眺めたりしている。僕らもすぐにその一員となる。

いま自分が見ているものは岩で出来た橋と森と川だけだ。それなのに自分がいま外国にいるのだということを強く感じた。自分の生まれた場所から遠く離れたところにいる。自分の人生の本来の文脈から別のところにいる。そしてそれがとても正しいことのように感じた。その不自然さが自分にぴったりと寄り添う。

僕たちは橋を渡りきり別の山に入る。こちらの山頂にはお店やレストラン、そしてホテルがある。道路があり車も駐車している。ウアラオプ(長期休暇)にうってつけの避暑地だ。ドイツ人は休む時にはちゃんと休む。体とこころと人生をメンテナンスする時間を大切にしている。

僕たちは森の中に入り、ピクニックをする。下に布を敷き、その上にお弁当と持ってきた食べ物を並べる。ワインを飲みながら、クスクスの入ったサラダやチーズやブロートヒェン(ドイツの小さいパン) をつまむ。デザートにはヨーグルトとキットカットを食べた。

そのままその森の中で過ごす。ただただ時の過ぎ行くままに。

見上げると太陽の光が緑の色の葉に透ける。本当に美しい。目を大きく開きその緑を見つめる。こういう色は絶対に忘れないようにしないとな、と思う。

顔にしずくがあたり、雨が森を打つ音が聞こえる。そろそろ帰り時だった。

下山途中は雨は降ったり止んだりした。下の町に着く頃には雨は本降りになった。びしょびしょになって、僕たちは笑いながら船着場へと急いだ。

船室に入り雨を避ける。こんな急に天気が変わるなんてひどいよね、まわりの乗客達と一緒に笑った。

駅に戻り僕は濡れたシャツを着替えた。次の電車が来るまで少し時間があったので待合室で待った。

帰りの電車では特に会話もせず、窓の外を眺めていた。ベルリン行きのバスは旧市街にあるドレスデン中央駅から出る。

ドレスデン中央駅に着いた。バスが出る前に駅の前のレストランで軽く食事をした。フライドポテトを食べて、スープを飲んで体を温める。

時間になった。ベルリンに帰る時間だ。僕はバス停に行き乗車の手続きを済ませる。彼女にお礼と別れのあいさつをする。彼女に次に会えるのはいつになるだろうか。一生会えないかもしれないし、思いの外簡単に会えるのかもしれない。友達にさよならを言う時はいつもそう思う。僕はドレスデンに来て本当によかったと思う。その街に一人でも友人がいると街の見え方が変わる。これからもそういう場所を増やしたい。世界中のあらゆる場所を特別な場所にしたい。そのために僕は移動し続けたい。

 

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